ヒトの脳には数百億個もの神経細胞がありますが、これらの神経細胞はシナプスと呼ばれる接合装置を介してネットワークをつくり、脳の複雑な働きを実現しています。多くのシナプスでは、片側の細胞内にあるシナプス小胞と呼ばれる直径40ナノメートルほどの袋から細胞間に神経伝達物質が放出され、それが受け手の細胞を刺激することによりシグナルが伝達されます。しかしながら、シナプス小胞において、様々な機能性タンパク質や脂質がどのぐらい存在してどのような構成になっているのか、また神経伝達物質の貯蔵・放出がどのように行われるのかは詳細に分かっていませんでした。
私たち人間を含む生物の脳内の情報伝達は、神経細胞同士のシナプスと呼ばれる結合での信号のやりとりにより行われています。シナプスでの情報伝達は記憶や学習の分子基盤と考えられ、盛んに研究されていますが、シナプス伝達がどのように調節されているかは、まだ不明な点が多く残されています。本研究により、シナプス伝達の調節に“壊し屋”タンパク質による分解が重要であることが新たに分かりました。現在、脳梗塞やアルツハイマー病、統合失調症、うつ病などの脳神経精神疾患で神経伝達物質の放出異常が起こっていることが推測されています。
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